2020年6月20日土曜日

主張 エアライン業界の黄金時代は終わった?

Has a golden age of travel passed?

By Flight International19 June 2020

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アライン業界で2020年から2021年にかけ欠損1千億ドル予測は前例がない巨額規模だ。

厳しい不況の到来は時間の問題とエコノミストが警句を発していたが、コロナウィルスの世界的大流行で一気に危機的状況が到来した感がある。大手エアラインが業務縮小し、中小エアラインは存続の危機に追い詰められる様子を目の当たりにしている。今後は吸収合併が始まり、倒産や路線廃止も避けられない。中古機材だけでなく新造機材も運航されないまま処分されれば機体生産の復調も無理だ。

一部で旅客運航が再開している。今後の動向が見えない世界で第二波、第三波も予想される中、運航が制約されかねず財務面でも混乱しているが活路を見出そうというのだろう。企業存続の鍵はキャッシュ、機動性に加え運そのもののようだ。

今後数ヶ月あるいは数カ年の予測でも今後の再生の姿はわかりかねる。その中でエアライン業界は次の三点に留意すべきだろう。

ひとつが原油価格だ。エアライン各社トップの懸念はいつも燃料価格だ。石油業界は過剰設備を抱え、地政学から市場占有率にとりつかれている。中心的存在のサウジアラビアとロシアは供給抑制に向けた協調に向かう様子はない。不況によりモノ、サービスの需要は弱く、航空旅行や原油も例外ではない。生産国がどんな選択をするにせよ、需要衰退で燃料価格は低水準のままで推移する。

二番目が安全だ。コロナウィルスのワクチン開発が迅速に実現すると予想してはならない。1年ないし1年半という予測は政治家やビジネスピープルのものであり、科学者は経験上で10年単位と予測している。空港や機内での利用客の防護策がいかなるものにせよ、今回の大流行の経験から旅行に慎重な態度となる向きが増えそうだ。

出張需要ではリスク回避の動きが強い。各社とも社員の移動出張に慎重となる。遅かれ早かれ大流行は再度やってくることが経験則でわかっており、慎重にならざるを得ない。

三番目に純然たる経済だ。不要不急の航空旅行に及び腰となる。不況が到来する前に、グローバル経済で借り入れ前提の不要不急の支出で生まれたバブルが吹き飛ばされている。世界的大流行が再来する前だが消費者、企業の負債は警告水域を既に超えている。さらに失業の広がり、雇用の不安定から多くの人々が支出より貯蓄に向かう本能的反応を示している。

航空旅行の黄金時代はすでに過去のものとなったのかもしれない。■

2020年6月13日土曜日

中国国内線は供給増加中だが、需要は呼応していない模様


Daily Memo: Chinese Domestic Capacity Near 90% Of 2019 Level

Bradley Perrett June 10, 2020

国国内のエアライン各社で利用率が前年の9割近くに回復しており、来週は96%に上昇しそうだ。
ただし、需要は低いままだ。各社は需要に先立ち運航力を再編しているが、従業員の有効活用の意図もあると業界筋は見ている。
直近の国内便の運用力増は4月に始まり、5月に入り安定したとOAG及びCAPA航空センターのデータでわかる。
5月11日に始まる3週間で国内線の定期運行は前年比で80%に達し、3月・4月平均の63%から増加した。
先週は90%になり、今週は88%で推移している。来週の運行予定は前年比96%と最高水準となる。
2019年実績の9割は通常時の9割と意味が異なる。エアライン各社はコロナウィルスの大量流行がなければ大幅な供給増を予定していたためだ。1月に緊急事態の宣言前の8週間は国内便の供給量は前年比で約6%増えていた。
国内線利用客のロードファクターは弱含みだ。5月は平均65.2%で、見かけ上は増加していたと中国データ企業Variflightが説明している。原因は規制ではなかった。国内便で感染予防のためロードファクターの制限を撤廃しており、一方で国際線は75%を上限としていた。
エアラインの大多数が国営企業で従業員削減や出勤停止ができない事情もある。社会安定を最優先とする方針はどこにも書かれていないが、共産党の統治にかかわることなので暗黙の了解がある。
そのため他国のエアラインと比べると中国各社の運航力活用コストは低くなる。西側では従業員のレイオフがあり、業務再開を待って給与手取りは増える。中国系エアラインでも多数の未利用機材がある。
路線運航能力の再開が早まる背景に業務をなるべく通常通りとし利用客を呼び戻したい意向がある。キャンセルをどこまで減らせるかが重要だ。
中国国内の利用率は不明だが、エコノミー席の平日料金を利用が最大の北京上海線で見れば傾向がつかめる。6月中旬はCNY400-500(5,600円-8,000円)だが、3週間前はCNY500-600、さらにパンデミック前はCNY1,000だった。このことから業界は実需要より先に対応していることがわかる。

一方で中国系エアラインの国際線利用状況は4月以来は前年比で5-7%になっている。その後増加、減少いずれの動きもないとOAG、CAPAのデータから読み取れる。■

2020年6月6日土曜日

自社生き残りが課題のボーイング、エアバスにサプライヤー支援の余力なし---航空業界の不況は今後数年続く

Airbus And Boeing Focus On Own Survival

June 04, 2020

aircraft
Credit: Next143/Getty Images

COVID-19パンデミックの余波で、今後数年に渡り民間航空部門では苦痛と不安定性が続く。
エアラインの多くが存続の危機に立つ中、メーカー側も同様だ。機体完成メーカーや大手サプライヤーで財務が苦しくなり、自社の存続に集中せざるを得ず、顧客の支払い条件やサプライヤー支援まで配慮する余裕がなくなっている。
エアバスは4月8日に3割減産を発表していた。今度はボーイングで、各種削減策を打ち出した。民間機生産の削減、開発研究の規模縮小だ。ボーイングにはCOVID-19関連の余波とともにMAXの飛行停止措置継続のダブルパンチとなっている。
エアバスは顧客の機体受領先送りに対応しもう一段の削減が必要と見るアナリストがある。ただし、同社はまだ決定を下していない。
ボーイングはボーイングサウスカロライナ(BSC)で787生産を再開し、5月に入り社員多数が職場復帰している。
エアバス、ボーイングの4月引き渡しは合計12機のみで、前年同月比で87%減となった。■

2020年5月31日日曜日

スペースジェットに未来はない? そんなことはないという証拠

SpaceJet waiting game plays on at Mitsubishi

By Flight International30 May 2020

え難きを耐えてこそ真の忍耐力、とのことわざが日本にある。


三菱航空機の親会社三菱重工業(MHI)はこれを体現してきたといってよいだろう。


MITSUBISHI MRJ-SPACEJET c AirTeamImages
Source: AirTeamImages

当初計画からの遅延7年がさらに伸びる兆候がある中、スペースジェットの野心的な事業は弱小企業ならとっくに倒産につながる規模だ。▶だが、さすがのMHIも忍耐の限界に来ているのだろうか。▶昨年のパリ航空ショーで名称が変わったスペースジェットM90は型式証明取得と路線就航という課題に三菱航空機は問題解決にかかりきりだ。


販売も低迷している。米系キャリアが「スコープ条項」による制限の解除にこぎつけるという楽観的見方があったが、パイロット組合は依然強硬なままM90はリージョナル路線への就航できなくなっている。▶2019年に76席型スペースジェットM100の開発開始を発表したのはスコープ条項撤廃は無理との見通しのためだったのだろう。▶ただし、一年たちMHIは同型の開発作業を中止した。またM90の予算も削減し、米国内のフライトテストセンターも閉鎖した。▶すべてコロナウィルス危機後の新経済を反映している。


航空利用客の減少でキャッシュフローが弱いエアライン各社は発注を減らす受領の先送りをしている。▶これはスペースジェットだけではなく、ボーイング787で見られる現象だが、MHIの場合は収益を押し下げる効果になっている。▶一方でスペースジェット事業費は昨年度だけで13億ドルと膨れ上がっており、コスト削減対象で目立つ存在になっている。


市場動向がスペースジェットに不利なのは明らかだ。▶ライバルのエンブラエルもボーイングとの合併をご破算にし、やはりスコープ条項対応の新世代機投入ができていない。(E175は販売好調だが。)


新型機需要の崩壊でMHIもM90の型式証明や路線就航に余裕が出てきた。▶エンブラエルによるリージョナル機独占を歓迎するエアラインはなく、米パイロット組合が弱体化すればスコープ条項の変更あるいは廃止も視野に入る。航空旅行の需要もゆくゆく復活するはずだ。

スペースジェットは新規参入機種になるが、三菱重工には第二次大戦前までさかのぼる航空機製造の実績がある。同社には忍耐の意味がわかっているはずだ。■

2020年5月30日土曜日

地磁気の減少で衛星に重大な損傷が発生する?

大西洋上の問題だからと安閑としていられません。この惑星上の生命を守っているのは放射線から守るシールドがあってこそで、地磁気の減少でこのシールドが弱まれば、まずガンの発症が増えたり、地震が増えるでしょう。あるいは磁極逆転になるのか。人類の存続があやうくなるのでは

大西洋上空に地磁気が弱い箇所があり、ここ50年で規模を拡大しながら年間12マイル西に移動している。

南大西洋上空異常現象と呼ばれ、地球を守る磁場が消えれば、危険な太陽放射線にさらされる危険事態が発生しかねない。▶欧州宇宙局ESAは異常現象がここ5年で二方向に分離したと報告。一つがアフリカ南西の洋上で、もうひとつは南アメリカ方面だ。▶「南大西洋上空異常現象の東側部分は10年前に登場し、最近は大きく発達している」とドイツ地球科学研究所が指摘している。▶地磁気全体は200年でおよそ9%減少しているとESAはまとめている。▶異常現象が二分化した理由は科学陣でも解明していない。地球内部の核の動きとの関係の解明が急務という。

磁場の衰弱は衛星や宇宙機にも影響を与える。▶太陽光中の高電荷粒子が増えれば地球を守るシールドを通過しやすくなる。▶低地球軌道上の宇宙機や衛星が粒子を浴びればハードウェアの損傷や故障発生につながる。また内部の電子装備の機能が低下し、重要なデータ収集機能が遮断されたりコンピュータ部品の劣化が進む原因となる。

さらに国際宇宙ステーションの問題がある。2018年度の研究報告によれば異常現象部分を通過するとステーション内部の人員は「強度の放射線に数分間被爆する」とある。

地球の磁場は地表1800マイル下にある外核の流体状の鉄の渦巻移動が生んでいる。▶変化を正確に観測するためESAはSwarm衛星3機を利用している。■

この記事は以下を再構成したものです。
May 29, 2020  Topic: Space  Region: Space  Blog Brand: Techland  Tags: SatellitesSpaceSpace ForceMagnetic FieldEarthOrbit


Ethen Kim Lieser is a Science and Tech Editor who has held posts at Google, The Korea Herald, Lincoln Journal Star, AsianWeek and Arirang TV. He currently resides in Minneapolis.

2020年5月22日金曜日

エールフランスがA380全機を運行終了

Air France Brings Forward A380 Retirements

Helen Massy-Beresford May 20, 2020

A380
エールフランスのA380は運行を終了した。
Credit: Joe Pries

エールフランスエアバスA380運航を完全終了した。コロナウィルスの大量流行を受けスーパージャンボ機退役を前倒しした。
「COVID-19の危機状態のため、ならびに運行規模への影響のため、エールフランス=KLMグループは本日をもってエールフランス保有のA380運行を完全終了します」と同社は5月20日に発表。
同グループのA380は2022年末までに段階的に運航終了の予定だった。機材の合理化、簡素化で企業競争力と利益力を確保する。
エールフランスのA380は、同社保有、またはファイナンス・リース中の機体は5機で、別の4機がオペレーティング・リースだ。
Aviation Week NetworkのFleetDiscoveryデータベースを見ると、この9機は全部飛行停止状態だ。5機がシャルル・ド・ゴール空港、2機がフランス南部のタルブ・ルルド・ピレネー空港、2機がスペインのテルエル空港に駐機中だ。
A380運行終了で同グループは評価損5億ユーロ(5.5億ドル)の計上を迫られ、2020年第2四半期で償却する。 
エールフランスはA380にかわりA350、ボーイング787を運行する。フランスのフラッグキャリアである同社は昨年12月にA350を10機追加発注し、A380とA340の処分後に対応するためとしていた。

ルフトハンザも同社14機のA380のうち6機を退役させる発表をしている。コロナウィルス危機で大きく落ち込んだ航空需要の回復に時間がかかるためだ。■

2020年5月16日土曜日

原子力推進航空機は実用化される? 


aircraft in flight
Credit: U.S. Air Force


Aviation Week Networkでは読者からの質問を随時受け付けており、編集者アナリストが回答している。更に回答が困難な場合には専門家ネットワークにアドバイスを求めている。
「原子力推進航空機の可能性はあるのか。実現すれば航続距離無制限の無人機が生まれるのではないか。」
技術担当の主幹グラハム・ウォーウィックが回答しました。
ロシアが原子力推進式巡航ミサイルのブレヴェスニクの試射に成功したと主張している。NASAも無人回転翼機を土星の衛星タイタンの探査用に開発中だが、放射性同位体の応用で熱電素子発電を使う構想だ。このように原子力推進は現実になっている。
米空軍は核分裂反応炉を改修したコンベアB-36爆撃機のNB-36Hに搭載し、1955年に飛行させている。(上写真参照) この事業は打ち切りとなったが、研究者間では繰り返し原子力推進による無限大飛行距離と炭化水素排出ゼロのフライト構想が取り沙汰されている。
2014年にNASAは低出力原子炉を搭載した航空機構想を発表している。この原子炉は常温核融合炉でロッキード・マーティンのスカンクワークスでは小型融合炉を開発中でC-5程度の航空機で必要な電源を確保するのが目標だ。
航空機に核出力を応用する方法は他にもある。ひとつが高性能小型モジュラー反応炉(SMR)で開発中だが空軍基地や空港単位で必要な電源が確保できる。移動式の小型炉は電気飛行機の充電にも応用できよう。それとは別にSMRで水から水素を取り出し、大気中の二酸化炭素と結合させ液体燃料を生成する方法がある。この電力で液体燃料を作る技術があればジェット燃料のかわりになる。

読者のコメントです


EDWARDFRANCIS
Thu, 05/14/2020 - 13:32

原子力発電所には相当の抵抗感があるので「はいそうですか」と行かない話だ。原子炉が頭上を飛び、広大な立ち入り禁止区域ができるのを一般社会が受け入れる可能性はない。この構想は取り下げてもらいたい。

他方で民間航空分野でもカーボン・オフセットの導入を組織的に始めるべきときに来ている。全世界の温暖化効果ガス排出の3%が航空業界によるものだ。この費用は航空運賃に転嫁しつつ、オフセットの努力を目に見える形で航空業界は進めるべきだ。

航空運賃が上がれば太陽光発電のマイクロ配電網がアフリカに生まれ、大量の森林喪失も防止できる。樹木はCO2吸収効果があるがアフリカで樹木が消失しつつあるのは調理や暖房のため伐採されているからだ。カーボン・オフセットを協調実施すれば森林消失に歯止めがかかり、森林再生の費用を拠出する新規企業も生まれる。であればアフリカ女性も薪集めから解放される。浮いた時間は教育や家族計画に使える。 

民間航空には明るい将来があるが、現在の危機を今後進むべき道に反映させるべきであり、その道がカーボンニュートラルにあることは自明の理だ。

JGODSTON
Thu, 05/14/2020 - 14:42

プラット&ホイットニー社員です。当社では1960年代から1970年代初期に『原子力推進機」を検討したものの、意味がないと判断しました。あまりにも複雑で、大重量で、高価格となるとためです。今回はどこが違うのでしょうか。

この記事は以下を再構成したものです。

What Are Prospects For Nuclear-Propelled Aircraft?


Graham Warwick May 14, 2020

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