ジェットブルーエアウェイズが念願の英国便開設を実現した。大幅な料金値下げをひっさげ世界有数の大西洋横断路線に旋風を巻きおこすのか。
007便となったジェットブルーのエアバスA321LRがロンドン・ヒースロー空港 (LHR) に8月12日午前到着し、同社が大西洋横断路線に就航した。第一便には同社CEOロビン・ヘイズが乗客となり、ジョン・F・ケネディ国際空港 (JFK) を8月11日夜遅くに離陸した。
ジェットブルーの大西洋横断初便がロンドン・ヒースロー空港に8月12日到着した。Credit: JetBlue Airways
8月はデイリー運航だが、9月は週四便に減らし、ロンドンのガトウィック空港 (LGW).に到着地を変更する。10月にデイリーに戻す。同社はボストン-ロンドン線を2022年に開設する。
同社は大西洋横断路線にあたり強固な自社ブランドイメージ、新世代A321LR、上級仕様のミントで24名にフルフラットシートをビジネスクラスに設定し、従来の低運賃キャリアが長距離路線で経験した挫折を回避できるとしている。直近ではノーウェイジャン・エアインターナショナルが赤字を脱却できず大西洋温暖路線から2019年撤退している。
ノーウェイジャン他の失敗の歴史を眺めると、ニューヨーク=ロンドン路線に参入したジェットブルーはどうなるのかという疑問が出てくる。業界では早速同社には有利に働く点があるとの指摘が出ている一方、障害となる要因がいくつかあるとの声もある。
Aircraft/Airline Projects Inc.社長のクレイグ・ジェンクスによればノーウェイジャンには真のビジネスクラスと呼べるものがなかったことが上級利用客獲得で障害となった。他方でジェットブルーは42インチピッチのシートを提供し、上級クラスがA321にある点を指摘する。
「ロンドン=ニューヨーク路線への新規参入事例を見ると参入後にすべてプレミアムクラスの必要性に気づいています。現行各社はビジネスクラスの販売収益でエコノミークラスの低料金を穴埋めしているのが現状です。単一クラス編成では成り立ちません」(ジェンクス)
Cranky Flierブログで人気を博すブレット・スナイダーは飽和気味のニューヨーク=ロンドン線ではジェットブルーも苦戦するとみている。A321LRの運行経済性は確かに魅力だが、ワイドボディ機のシートコストが低く、これに対抗するのは「勝ち目がない」とする。
「シートを埋めコストを下げるエアラインが既存各社に対抗するという図式ではない。むしろ効率が優れることで知られる機材を使いながらワイドボディ機のシートコストには対抗できないエアラインになるのではないか」
COVID-19大流行の中で新サービスを展開するとは尋常ではないように見えるが、航空旅行需要が低迷しているからこそ好機といえるのであり、ただでさえ混雑しているLHRのスロットペアを確保する好機だ。通常ならスロットペア入手には30-50百万ドルが必要でジェットブルーはこれまでは支払い価値があるか懐疑的に見ていた。だがパンデミック中で通常なら手に入らないスロットが手に入る。
ロンドン第二の空港LGWは本来はジェットブルーが希望する就航先ではないはずだが、英国発の観光需要で大きなシェアを同空港が持っていることは知られている。そこでジェットブルーの米国内・カリブ海路線が訴求力を持つことになる。また運航コストも比較的安価でありながら路線連絡が便利な空港で鉄道路線で市中と結ばれアクセスも容易だ。
英米間のビジネス需要に食い込もうとジェットブルーは便数を増やす必要に迫られそうだ。COVID-19前は大手会社はニューヨーク=ロンドン線で毎日4便を運行していた。ただしジェットブルーはLHRでのスロット追加と同様に困難に直面しそうだ。
「ヒースロー=ニューヨークの便数が極めて重要ののはビジネス利用客が好きな時に移動できることを重視しているからで、時間帯はばらつくからだ」とジェンクスは述べ、「ジェットブルーは便数を増やす方針だろうが、どう実現するかが試される。来年1月にウィルス問題が終わっていれば、スロットの空きはなくなり、40-50百万ドルに戻っているだろう」
ジェットブルーが成功を収めるには英米双方の既存エアラインとの厳しい競争に勝ち残る必要がある。アメリカンエアラインズ=ブリティッシュエアウェイズ、デルタエアラインズ=ヴァージンアトランティックの各共同事業体に加え、ユナイテッドエアラインズがある。こうした大手に比べジェットブルーの提供座席数はごくわずかだとはいえ、これまで米大陸横断路線で同社が既存の構図を破壊してきた実績から放置すれば同社が再び秩序を破壊する恐れもある。
大手各社はジェットブルーの脅威を深刻に受け止めている。ユナイテッドはボストン=ロンドン線を開設し、ジェットブルーの2022年運行開始に先手を打った。各社とも当面はジェットブルーと料金で対抗する。
上記のスナイダーはエコノミークラス料金は夏の旅行シーズン明けに「競争激化」するとみている。ビジネスクラス料金は「予測困難」とし、理由として大手がジェットブルーの料金水準にどこまで合わせるかが見えないためとする。パンデミックのためビジネスクラス料金が低く抑えられたままだが、スナイダーはジェットブルーの参入に対し大手は短期的にイールドを犠牲にする動きに出るとみる。
「大手各社は脅威と受け止めれば積極策に出るだろう。かなり大規模な対抗策が出てくるのではないか。提供座席数では大きな変化はないだろうが、料金収益の管理が大きく変わりそうだ」
これに対しジェットブルーには各種の対応策がある。強力な商品ぞろえ、機材の効率引き上げ、さらに経験豊かな経営陣がある。だが同社はロンドンの混雑した空港で便数を増やすことの難しさに直面するはずだ。
ジェットブルーが短期間で黒字化に成功すれば、新規参入の成功例となり、A321LRの性能で可能なその他ヨーロッパ乗り入れとしてアムステルダム、マドリード、パリやローマも視野に入るだろう。■
JetBlue Puts Transatlantic Ambitions To The Test
Ben Goldstein August 20, 2021
https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/jetblue-puts-transatlantic-ambitions-test
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