2020年5月4日月曜日

強気のエアバスCEOの需要回復見通しとボーイングとの競合再開への対応



Airbus Mulls 'Smaller Scale' Rate Changes, May Not Need State Aid

Jens Flottau April 29, 2020

Airbus
Credit: Airbus

エアバスは6月まで生産計画の変更は小幅にとどめ、状況に応じ変更したとしても以前の削減規模より「小規模」になるとCEOジローム・フォーリ Guillaume Fauryが4月29日発言した。
同社は顧客各社の事業計画、財務状況を分析し、各社の短期行動と長期戦略双方を理解したいとする。同時に需要回復を予想に応じた財務計画にするという。
同社CFOドミニク・アサムは「予定通りなら政府支援は不要だし、4月はじめの段階で300億ユーロ(325億ドル)の流動資金があり、当面は十分に手当できる」と言い切っている。
同社は4月8日に三分の一程度減産する決定をし、ナローボディは月産40機に(以前は60機)、A330/A330neoは2機、A350は6機となった。アナリストには顧客が納入先送りに走る中、さらなる減産は避けられないとの見方もある。
フォーリは第1四半期の122機納入に対し、第2四半期は「極めて低調」になると見ている。第1四半期は完成済み60機が納入できなかった。
「夏以降は引き渡しは増える」とフォーリは完成機の未引き渡しは第3四半期がピークと見ている。「ただし状況はきわめて動的だ」
短期的にはキャッシュ節約と生産規模削減で乗り切るが、フォーリとしては短期のうちに成長路線に再び乗せたいとする。「競争は再開する。当社は素早く柔軟に立ち回りたい。今回の危機に捕らわれ競争が再開できなくなる恐れもある」が単通路機需要はワイドボディより早く回復すると見ている。ただしその時期は「予測が極めて困難」という。COVID-19危機が収まれば「単通路機の増産は極めて急速」になるという。A321XLR開発は「好調なスピードで」進めるという。
エアライン各社との協議から、フォーリはウィルス危機前より小型機を好む傾向が強まっていると感じている。この点でエアバスは有利な立場で、A220を最小のナローボディ機として、A321XLRを一部ワイドボディ機を食う形で品揃えしているとする。
ワイドボディ需要の回復は2023年ないし2035年以降とフォーリは見る。だがナローボディの見通しは「そこまで暗くない」という。このためエアバスは以前の生産規模へ復帰する力を温存する。新規設備投資としてツールーズの単通路機生産ライン追加などは需要が月産60機ラインを超えたと判断するまで凍結する。
ボーイングがコロナウィルスに加えMAXの飛行停止で苦境にあることを受け、フォーリはエアバスの「競争力は向上しており、製品揃えは適切」と主張。また今回の危機は「機材更新が早まるチャンスになる可能性がある」とし、ボーイングとエンブラエルの民生機共同事業構想が潰れたのは「付随的損害を生み、競争面で当社によい結果をもたらす」と見ている。
エアバスの第1四半期売上は106億ユーロで4.8億ユーロの純損だった。前年同時期は125億ユーロ売上で4千万ユーロの純利益を計上していた。調整後の営業利益は49%減の2.8億ユーロだ。自由に使えるキャシュフローは第1四半期はマイナス80億ユーロと前年同期の2倍になっている。エアバスは未納入の60機を在庫算入に迫られ、36億ユーロを贈賄騒動の解決に支払っている。■

2020年5月3日日曜日

ボーイング:民間機事業不振で国防事業頼みに


シアトルで生産中のP-8 ポセイドン哨戒機。 Boeing photo.


ーイング経営陣は業績維持を防衛部門に期待せざるを得なくなっている。民生機事業はCOVID-19の打撃を受けたままだ。

民間航空輸送は前年比95%減となり、同社CEOデイヴ・キャルホーンは各アナリストとの電話会議で第1四半期業績を語っていた。エアライン業界は大幅な業務縮小で機材は地上待機のまま、新規機材発注は先送りされ、機材受領も延期され支払いが遅れたり止まっている。

世界的な経済減速によりボーイングの第1四半期売上は169億ドル、13.5億ドル赤字に転落。前年同期の売上は229億ドルで23.5億ドルの黒字。

「政府向け防衛宇宙事業が今後の業績安定に重要な要素になっています」「政府向け事業は2019年の収益で45パーセントを占めるまでになりました。今年以降の比重が増えるのは明らかです」(キャルホーン)

 以前から737 Max 旅客機の飛行再開が決まらずボーイングの財務環境は厳しく、 737 Max 生産は1月から停止したままだ。

2021会計年度は国防総省事業が同社の防衛部門を後押しし、防衛部門の売上が民生部門を上回る規模に拡大するとキャルホーンは見ている。

直近の業績に貢献が期待される事業に海軍向けMQ-25Aスティングレー無人艦載給油機、海軍向け超大型無人海中機(XLUUV)、空軍向けT-7レッドホーク練習機、同じく空軍向けMH-139グレイウルフヘリコプター(UH-1ヒューイの後継機)がある。

米海軍はMQ-25給油機4機の製造契約をボーイングに2018年に8億ドルで交付した。海軍は同型機を72機配備する。

同年に空軍はT-7レッドホーク練習機製造で92億ドル契約を交付し、グレイウルフヘリコプターでも24億ドルの契約を交付した。各事業でボーイングは他社より低金額を提示したのは、他事業でキャッシュフローを確保し交付前に開発構想を固めることができたためだ。この戦略を打ち立てたデニス・ミュイレンバーグは昨年12月にCEOの座を退いた。

2019年2月には海軍から43百万ドルでオーカXLUUV4隻建造の契約を交付されている。設計はエコーボイジャー無人ディーゼル電気推進潜水艇が原型で、エコーは全長51フィートで母艦から発進し6,500カイリを自律運行できる。

2年前は民生機事業が同社の主力だった。ジェット旅客機事業でキャッシュを確保し研究開発に投入することで他社に差を付けてきたが、国防総省契約がないと売上が安定しなくなるまでになった。

民生機部門の減速で同社の研究開発力にどんな影響が生まれるかは不明だ。ボーイングは16万名の従業員の10%を削減する。また配当支払いを中止するほか、不要不急の支出は見直す。

「研究開発や設備投資を削減、あるいは先送りする」のはコスト削減策の一環とキャルホーンは説明した。ただし、将来に大きな意味がある重要事項や技術には支出を続けるという。■

この記事は以下を再構成したものです。

In Role Reversal, Boeing's Defense Programs Prop Up Commercial Business



April 30, 2020 11:47 AM

2020年4月26日日曜日

アエリオンの超音速ビジネスジェットはフロリダで生産へ 

Supersonic jet maker Aerion to build manufacturing site in Florida

By Jon Hemmerdinger25 April 2020

Aerion AS2アエリオンが開発中のAS2超音速ビジネスジェットの想像図
エリオンは超音速ビジネスジェットAS2をフロリダ州メルボルンで新設する工場で生産する。同市はフロリダの航空宇宙産業の集積地となっている。
同社はメルボルンに「グローバル本社ならびに研究開発・設計製造・整備機能を集積する」とフロリダ州知事ロン・デサンティスが4月24日に発表した。アエリオン広報も内容を認めた。
総額3億ドルを投じ「アエリオンパーク」施設が生まれると同知事は述べた。同社はAS2を同地で2023年に生産開始し、2026年までに現地雇用675名分が生まれる。
「各地の立地条件を検討のうえフロリダ州、メルボルン地域と組むことで超音速機の持続的発展が実現すると今から興奮しています」とアエリオン最高経営責任者トム・ヴァイスが述べている。
知事広報室からは「アエリオンが各種施設と長期的投資をメルボルンで展開するのはCOVID-19危機の経済苦境から脱却をめざす同地にとって大きな一歩となる」との声明が出ている。
AS2は12名乗りで2024年の初飛行を目指す。GEエイビエーション・アフィニティ製エンジンでマッハ1.4巡航飛行を実現し、ニューヨーク・ケープタウン間を9時間56分で飛行でき、3時間39分の時間短縮効果が生まれると同社は説明。■

2020年4月19日日曜日

空飛ぶ自動車で主導権を狙う米国で空軍向け小型版が3年以内に本格生産に入る

動垂直離着陸(eVTOL)技術による「飛行車」の本格生産が三年以内に始まると、米空軍で調達を統括するウィル・ローパーが述べている。
この性能で軍のミッションは「従来の二次元から三次元へ」拡大し、「機動性」も強化されるとローバーは述べ、空軍は民間企業への資金提供で「最高度機動車両」 “Agility Prime” と呼ぶeVTOL装備の実現を目指している。▶今月末にも各社の構想案が空軍に披露される。現在想定中のeVTOL車両は小型で輸送能力は数名程度。▶eVTOL車両の性能でミッション実施が可能か見極めてから今後の調達規模を決めるとローパーは述べており、「兵站任務に投入可能となれば大量購入するが、保安救難用途なら小規模調達になる」
ローパーは空軍の安全認証を民間企業に付与し、最高度機動車両の飛行時間を計上させることで「新型車両の利用を後押しし、FAA型式証明の取得が早まる」と見ている。
空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)の発表では最高度機動車両について4月27日に「仮想立ち上げ式典」を行い、各社の構想発表とともに、官民の投資機関を模索する。ローパーが基調講演を行うが、COVID-19のパンデミックにより予定を変更し仮想イベントとして実施すると説明。「イベントでは空軍と業界のつながりを強め、組織横断で新しい航空宇宙分野の立ち上げをめざす」(AFLCMCによる説明)
最高度機動車両構想ではeVTOL車両メーカーの競作から本生産委託先を決める。同構想のウェブサイトで公表中の文書では空軍は12月17日までに飛行試験の実施を求め、第1段階で以下の性能諸元の実現を各社に求めている。
  • 3-8名の搭載
  • 航続距離100マイル以上
  • 時速100マイル以上
  • 連続使用60分以上
第二段階で大型の貨物人員車両を目指す、とローパーは述べている。
最高度機動車両構想は軍の各種組織が共同推進する点で他に例を見ない。AFLCMC以外に空軍研究本部(AFRL)、空軍戦闘統合性能実現部門(AFWIC)、AFWERX、AFVenturesが関与する。後者はヴェンチャーキャピタルと各社を結ぶ機能を果たす。
ローパーはこの動きにより有望な市場で米国の立場が有利になる以外に米空軍が期待する「イノベーションパートナー」として民生部門が機能できるか実証する狙いもあると解説。▶ローパーにより民生部門の研究開発成果を活用し中国に差をつける効果がDoDに生まれており、今や技術革新が新しい戦場になっている。■
この記事は以下を再構成したものです。

Roper Sees Air Force ‘Flying Cars’ In Production By 2023

"We are going to accelerate this market for domestic use in a way that also helps our military," Roper stressed. "The Air Force is all in."

on April 16, 2020 at 7:15 PM

2020年4月18日土曜日

ボーイングの生産再開は4月20日以降に


Boeing Announces Phased-In Return To Commercial Production

Guy Norris April 16, 2020

Boeing Puget
Credit: Boeing

ボーイングは早ければ4月20日よりワイドボディ機生産をピュージェットサウンド地区で再開する。COVID-19のパンデミック流行で生産は一ヶ月近く止まっていた。
また4月20日よりレントン工場も737 MAXの生産再開の準備に入る。
ボーイングは3月25日より2週間に渡り航空機製造を中断していたが、ワシントン州でのコロナウィルス流行により対応が遅れた。同社は施設内の消毒を徹底的に行い、4月20日の第三シフト以降に段階的に生産を再開すると発表。
ピュージェットサウンド地区の社員27千名が747、767、777、787の各機生産を再開する。737生産ライン再開の準備にも入っており、レントンで4月20日以降の対応に入る。747、767、777の各ラインでは必要な人員を4月21日までに確保し、787ラインは4月23日再開となる。
またサウスカロライナ州の787施設は「今のところ操業中止状態のまま」と同社は発表。なお、軍用機生産は今週初めにピュージェットサウンド地区で再開した。
社員の健康とともに物理的に距離を維持する策を連邦、州双方のガイドラインに基づき行うと同社は発表。対策としてシフト開始時間をずらし、出退社時の混雑を緩和する、非接触のための表示、フェイスカバー、どうしても接近が必要な職場では防護手段、各シフト開始時に健康状態のチェック、手洗いの励行以外にビデオ会議は今後も続ける。

生産再開の発表と同日にボーイングは3月の引き渡し実績はわずか30機だったと発表している。2008年以降では最低の水準で、前年同期は149機だった。■

2020年4月4日土曜日

主張:航空業界は今後の回復を見据えどんな行動をとるべきか。

Editorial: A Code Of Conduct For Aviation’s Recovery

April 03, 2020

絶望的な状況だからこそ対策は大胆であるべきだ。米議会を通過しドナルド・トランプ大統領がサインした総額2.2兆ドルの中国ウィルス経済救済策はこの基準に合格だ。エアライン業界・貨物航空会社向け580億ドル巨額対策のうち290億ドルが助成金で、今後6ヶ月は従業員の給与支払いにあてられ、利用客がいなくてもフライトを維持できる。ボーイングが望んでいた航空宇宙産業向け支援600億ドルはそのままでは実現しなかったが、同社やその他サプライヤー各社には救済資金貸付や保証の道が残されている 
国連事務総長はCOVID-19を第二次大戦後で最悪の危機と表現し、前例のないパンデミックで必要不可欠な産業構造が消えないよう各国政府は対策を打つ必要がある。だが救済策で資金投入すると望ましくない効果が発生する可能性もあるし、危機が落ち着いた段階で各国政府は前面から退くべきだ。
政府支援から市場の歪みがエアライン業界で顕著になってきた。各国政府の協調がないまま、競争環境が不平等になっている。ボーイングが政府支援を受ける中でエアバスが支援は不要と主張したらどうなるのか。
パンデミックが沈静化すれば、業務回復に向けた長い登り坂が航空業界に立ちふさがる。単純にもとに戻るとの期待は無理だ。業界は今後を見つめて、可及的速やかな回復へ向け努力を積むべきだ。こんな行動規範はいかがだろうか。
従業員を大切にする。回復段階に入れば従業員の優れた仕事が必要だ。従業員の健康を維持し、必要な情報を提供すべきだ。当面は経費のやりくりで、出勤停止、給与凍結、雇用凍結が避けられないかもしれない。だが従業員を差し置き株主や経営者を重視すれば、労使問題を巻き起こしかねず、回復への道が遠のく。
顧客を大切にする。顧客の回復がなければ業績も回復しない。危機中は顧客に柔軟対応すべきだ。厳しい時期に関係が深まれば、あとで良い結果を生む。だが関係が悪化すれば長期的な損害は計り知れない。 
サプライヤーを大切にする。航空メーカー各社はこれまでリスクをサプライヤーへ押し付けながら、サプライヤーによるコストダウン成果に十分報いてこなかった。サプライヤーが潰れれば、あるいは業績回復が遅れればリスクはメーカーに帰ってくる。
産業基盤を大切にする。ペンタゴンは納税者の負担で巨大な調達力を発揮している。その力を短期での供給基盤の維持に使うべきであり、装備能力の開発が長期的に遅れても看過すべきだ。
自社業務を大切にする。業務回復の課題に対して従来以上に機敏かつ柔軟な対応で臨むべきだ。今回のウィルス以外にも気候変動などの課題があり、同様に対応すべきだ。
では株主にどう対応すべきか。ボーイングは株式買い戻しと配当金を通じ研究開発費用の6倍もの金額を株主に提供した。米エアライン各社は過去5年間で自由に使えるキャッシュフローの96%を株主還流した。今や納税者が産業界維持の負担を求められている。株主には健全なエアライン各社、健全なメーカーが必要だ。株主は自分の番が来るまで待つべきだ。■

2020年3月28日土曜日

民間航空の2020年は最悪の年になりそう。V字回復は期待薄。

IATAが2,500億ドルの売上減少を予測。2020年の運用容量は38%減少。

IATA Expects $250B Industry Revenue Shortfall

Jens Flottau March 24, 2020


IATAは世界規模でのエアラインの運賃収入減少を2,500億ドル近くと予測し、一刻も早い各国政府による救援策を求めている。
今回IATAはわずか二週間前に発表した最悪シナリオを書き換えた。2020年の運賃収入減少を1,130億ドルと見積もっていた。前回発表の直後から旅行制限措置に踏み切る国が続き、「事実上国際航空移動が停止された」とIATAは表現。IATAは損益見込みは公表していない。
運行容量は2020年に38%減少するとも発表。
【ヨーロッパ、中東】欧州、中東の各社では第2四半期でそれぞれ90%、80%に及ぶ。第3四半期もマイナス45%となる。第4四半期では対前年比マイナス10%になる。
【アジア太平洋と北米】第2四半期にマイナス50%、第3四半期に25%減、第4四半期はマイナス10%との予測だ。
【ラテンアメリカ、アフリカ】ラテンアメリカでは-80%から-40%が第2第3四半期で続き、アフリカは-60%から-30%になる。
民間航空全体では-65%(第2四半期)から-33%(第3四半期)となる。
【V字回復は期待できない】以前の危機脱却を敷衍した大方の期待と異なり、IATAは早期のV字回復を予測していない。今回のパンデミック状況はグローバルかつ地域により別の局面が同時並行で発生しているためだ。航空業界の復興にグローバル経済不況が立ちふさがり、エアライン各社は以前の交通量への復帰が見通しにくくなっている。そのためIATAはV字ではなく、U字回復と見ており、復興に長時間がかかるものの、需要そのものが消えるわけではないのでどこまで短時間で今後の復興が実現するかが鍵という。
【2021年への期待】IATAも2021年に財政刺激策の効果から「力強い回復」を期待しており、一部国でGDP成長が20%に達すると見ている。
「中国国内で折返し地点を過ぎた兆候」があるとし、3月前半になり状況が安定してきたとする。ただし、これは業界全体には当てはまらない。
【政府の支援策を求める】IATAは2,000億ドル規模の支援策が世界で必要だという。「ここまで深い危機状態は初めて」とIATAトップのアレクサンドル・ドジュニアは述べている。「超大型のアクションの迅速実行が必要だ」■

エアバスがA321XLRの第2生産施設として旧A380組立ラインを転用―320neoファミリーの受注残は1万機で、321neoが中心

  Photo: Photofex_AUT | Shutterstock エ アバスはフランスのトゥールーズにある最終組立ライン(FAL)でA321XLRの組立てを開始した。 フランスでのA321XLRの組み立て トゥールーズを拠点とするLa Dépêche紙記事によると、エアバ...